休んだ時にしか得られない幸せがある

自分の脳味噌が垂れ流した妄想が行き着く場所

ようこそアストルティアへ

「みなさんおはようございます!今日も元気いっぱい遊んで、色々なことを学びましょう!」

 

「はーい!!!」

 

私の名前は三橋夏美。○○市の××幼稚園で保育士として働いている。キャリアは六年の、どこにでもいる普通の保育士だ

 

私の住む◇◇県では、今あることで県中が噂になっている。私が働く幼稚園でもそれは毎日話題になるくらい有名で、その噂の内容は

「耳の尖った肌白い女性が出没している」

というもの。噂の出自は不明のザ・都市伝説といった感じで、迷信を信じない私はその噂を気にもしていないが、日を追う毎にどんどん噂が広まり、今では園児にも認知されるくらい、トレンドと化している

大人が何かを知るのは当然だけれど子供、それも園児は一体どこでこんな噂を知るのだろう。そう不思議に思いつつ午前のプログラムを全て終え、お昼休みに入ろうとすると、1人の園児が私の方に駆け寄り

 

「せんせい!ぼくのかいたえをみてください!」

 

とその園児が描いたであろう、一枚の絵を私に向け自慢気に見せてきた

 

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紙に描かれていたのは頭に天使の様なものを乗せた、女の子の様な存在。絵本で見たキャラクターを描いたのだろうか?可愛いが不思議と不気味さも感じる。園児が描いた絵にしては妙に上手いのが、不気味さをより強いものへと変えた

 

「上手ねぇ!この絵の子のこと、聞いてもいいかしら?」

 

「うん!いまうわさになってる、おんなのこをかいてみたの!」

 

確かに噂話の女性の特徴と酷似した見た目をしている。しかし見れば見るほど他の子達よりもずっと上手い。お世辞にも他の子達より絵が上手い子ではないのに、練習でもしたのだろうか?

 

「上手い絵は高い所に飾って、目立たせないとね。壁に貼り付けて、明日みんなを驚かせちゃおう!」

 

「やったー!せんせいありがとう!」

 

「いえい!退園の時間もう過ぎてるから、勝君もお家に帰ろう!」

 

園児達が全員帰ったのを確認すると、画鋲を使い預かった絵を壁に貼り付けた。不気味なのもあり、正直目立つ所には貼りたくないと躊躇したが、勝君の喜びを私のエゴで無下にすることも出来ず、結局壁は壁でも、扉を開けた時一番最初に視界に映る、奥の壁。それもど真ん中に貼り付けてしまった

 

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事務仕事を終え、帰路についた時には既に暗く、空ではお月様がぼんやりと輝いていた。保育士になりたての頃は、明るい時間に帰る園児のことを羨ましい、なんて思っていたが、仕事に慣れるにつれそう思うことはなくなっていった

しかし思えば思う程不思議だ。何故勝君は見たこともない、それもイメージしかない女の子の姿を、あんなにも上手く描けたのだろう?想像図なら私でも描けそうだけれど、いきなり上達したことについては不可解だ

 

2日前のお絵描きの時間では

 

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(確かこの絵だったのが)

 

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(やっぱりわからない。それに思えばこの女の子、何処かで見た覚えがある気が...)

 

「そうだ確かあのゲームで...」

 

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「!?」

「気のせいよね...?」

 

不意に感じた気配に振り向くもそこには誰もおらず、雪化粧を纏った道路が街灯の光に照らされていた

気のせいだと自分に言い聞かせつつアパートに帰宅すると、いつもなら寝室でパジャマに着替えるところを今日は物置に直行し、昔の記憶を頼りに引き出しを漁り始めた

 

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(あったわ。このソフトと)

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(それを起動するゲーム機が)

 

(けれど変ね。忘れていたはずのゲームのことを、どうしてこうも鮮明に覚えているのかしら?)

 

このゲームは十数年前。私がまだ中学生の頃に遊んでいたときのものだ

日本中にいる誰かと遊べることが、当時の私にとってとにかく新鮮に見えて、一日何時間も遊ぶくらい、ハマっていた事を覚えて、いや思い出した

(沢山バトルしてお友達も沢山作って、ボイチャでワイワイ馬鹿やったっけ。懐かしいなぁ。お友達だった人達、今どうしてるんだろう?)

 

(大分昔のゲーム機だけれど、まだつくだろうか)

 

ゲーム機にソフトを差し込み、起動してみると

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(ついた...?電池アイコンが0なのに起動したけれど、やっぱり古いからだろうか)

 

 

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ガタッ!!!

 

「み、見てない!何も見てない!!」

 

「と、とりあえず片付けないと...」

 

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「よかった...。そうよ。電池が切れたゲーム機が動くわけないじゃない。疲れたから悪いものを見たのよ」

 

自分を安心させる為今思い付ける限りの励ましをかけた私は、ゲーム機とソフトを片付け夕飯の準備を始めた

 

続く


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